「働き方改革」は良い取り組みのはずなのに、上司から残業するな、早く帰れというジタハラ(時短ハラスメント)になってしまっている現実があることでしょう。現場が自発的に求めて「働き方改革」をやっていれば、ジタハラは起きないはず。このようなことが起きているのは「働き方改革」の主導が、働いている我々現場からのボトムアップではなく上の上の上の方からのトップダウンだからなのです。
どのくらいトップかというと会社よりもずっともっと上、内閣総理大臣の私的諮問機関「働き方改革実現会議」、そう国が主導しているのです。働き方を改革するのは従業員なので、会社発信でやればいいものを、なぜ国がこんなにも声高らかに推し進めているのでしょうか。
【特集】「働き方改革」を独り歩きさせない!「働き方改革」の実現に向けて
目次
国が「働き方改革」を進めているのは"国力の維持"
結論からズバリ、「働き方改革」は国力の維持に他なりません。国力の維持なんていうと、なんだか三国志などの戦争をイメージするかもしれませんがそうではありません。平和ボケしている我々日本人は意識が低いところですが、日本でそれなりに生活していけているのは日本が持つ国力が一定程度安定しているからなのです。
「働き方改革」が国力の維持につながるなんて・・・と思うかもしれませんが、突拍子もない私の持論ではなく、しっかりと国が発信している内容から読み解くことができるのです。今回の記事では、それをひとつずつ理解していきたいと思います。
「働き方改革」を考える上でのキーワードは"一億総活躍社会"
「働き方改革」を考える上で重要なキーワードは「一億総活躍社会」です。「働き方改革」とググってみると、首相官邸ホームページが目に入ってくるでしょう。首相官邸のページを見てみると、このようなぺージが出てきます。
(首相官邸ホームページより)
書き出し3行の最初に、「一億総活躍社会実現に向けた最大のチャレンジ」と記載されています。働き方改革は一億総活躍社会実現が目的であるというのがわかります。となると、次に気になるのは「一億総活躍社会」が何かってことです。ちなみに「働き方改革」について提示されたのは、このページの右上(赤字の更新日の上)にある通り2016年9月です。
「一億総活躍社会」の実現は人口減少の抑制
次に「一億総活躍」でググってみると、これも首相官邸ホームページをすぐに見つけることができます。これが提示されたのは2015年10月と、働き方改革が提示される約1年前です。(首相官邸ホームページってこんななってるんですね。)
(首相官邸ホームページより)
これも3行でまとまっています。今度のキーワードは"少子高齢化"です。ちょっとイメージが沸いてきたでしょうか。働き方改革→一億総活躍社会の実現→少子高齢化問題の解決という構図が見えてきました。
さらに、この書き出しの中にある「新・三本の矢」について。「希望を生み出す強い経済」、「夢をつむぐ子育て支援」、「安心につながる社会保障」を「新・三本の矢」としていますが、この「新・三本の矢」こそが国を支える力「国力」なのです。逆の言い方をすると、少子高齢化が進むと、これら「新・三本の矢」の実現が困難になるのです。
直接的に表現をすると、経済が回らなくなる、次代を担う若者がいない、社会保障制度が破たんするということです。今の安定した生活からは想像し難いですが、もしこんなことが起きたら国に対する信用はなくなってしまいますよね。税金も払いたくなくなるし、どこか他の国に行くか・・・ってなりそうですね。マイナスのイメージを持ってもらうと「新・三本の矢」は国民の安全な生活を支える、つまり国力維持に必要な要素であることを感じてもらえたのではないでしょうか。
少子高齢化問題は人口減少問題
一億総活躍のキーワードに登場した少子高齢化(問題)は、よく話題にされる国民年金の収支バランスが崩壊するだけでなく、人口減少につながっている大きな問題なのです。
少子高齢化は、実は少子化と高齢化が同時進行している現象を意味します。高齢化は総人口に対する65歳以上の割合が高まること、少子化は出生率が低下することを意味しております。高齢化と少子化は必ずしも同時に起こるものではないのですが、現在の日本では高齢化と少子化が同時に起こっているのです。特に、少子化が言い表している出生率の低下がまさに人口減少そのものなのです。
人口減少による生活レベルの低下
人口減少がそもそもそんなに問題なのか?と、思うでしょうか。少しの人口減少であれば影響はないですが、極端な例を考えてみましょう。
日本の総人口が100万人になったとしましょう。2017年の日本人口が約1億2,600万人ですので、今の100分の1の人口です。いまこの記事を読んでいるあなたを中心に、あなた1人を残して99人がいない世界になるのです。仮に、3人家族で3人とも一緒にいたいということであれば、あなたの住んでいる家を中心に297人がいない世界というとです。
駅前の大型スーパーはなくなるかもしれませんし、もしかするとコンビニくらいに縮小されるかもしれません。そうなると近所のコンビニはなくなるでしょう。また、アミューズメント施設もお客さんが来ないので深夜営業はなくなります。年末恒例のジャンボ宝くじなんかも販売されないかもしれませんし、たとえ販売されたとしても1等は7億ではなく1/100の700万円かもしれません。世の中のサービスを利用する人、提供する人の双方が減少するため、現在の生活レベルが維持できないということです。
影響はサービス利用減少による生活レベルの低下だけではありません。我々の生活は、ライフラインを支える業種の人がいるおかげで成り立っています。その人たちがいなくなると、今の生活も送れないのです。人口減少が地域での偏りがなかったとしても、根本的に人が足りない可能性が発生する、つまり人で不足が発生し選択肢が減るということです。部屋をあたためるのは、電気、ガス、灯油のいくつか選択できる現状から、供給者が不足し選択肢が電気だけとなる可能性もあるのです。
一定水準を下回る人口になると、生きていくためだけの生活となり、生活を楽しむということができなくなってしまうのです。
人口減少のこれまでと予測
人口減少問題に関しては、人口問題研究所という国立の専門機関による予測が立てられています。2017年(平成29年)版の人口推計では、1億2,600万人の日本人口が50年後には約70%程度の8,800万名になると予測されています。
「日本の将来推計人口(平成29年推計)」(出生中位(死亡中位)推計)/国立社会保障・人口問題研究所
先に挙げた例は1/100と少し極端でしたが、人口が3/4程度になるということです。この予測は、出生率も死亡率も極端に上がったり下がったりしないペース(中位)で算出されたものです。出生率が下がり(出生低位)、死亡率が上がる(死亡高位)状態になったとすると同じく50年後の人口は現在の60%程度の8,000万名という予測になります。
現在の日本が、少子高齢化問題により人口減少している、つまり国力が低下している、さらには日本国民が日本文化の中で生きていけないリスクにつながっているのです。これを解決するための手段として、働き方改革により一億総活躍社会の実現を掲げているのです。
まとめ
少し長くなってしまいましたが、「働き方改革」を国が推し進めている理由は、日本国民が日本人らしく生活していくための国策ということが理解できたと思います。"風が吹けば桶屋が儲かる"というような話に聞こえてしまうかもしれませんが、国政や政治というのはそのようなものなのかもしれませんね。