"人馬一体"という四字熟語を現実に見られる競馬。今回は競馬を例に「確率」を理解してみたいと思います。以前紹介した宝くじの確率と期待値の例と同様に、分析セオリーの一つとして"比較"してみることで統計データを相対的に理解を深めることができます。今回は単勝、複勝などの購入方法別での比較をしてみましょう。
1.確率を計算してみる
宝くじの期待値計算の際にも触れましたが、分析セオリーのひとつとして”比較する"というものがあります。今回は、JRAの中で1年で一番の売上となる有馬記念を例に単勝、複勝、枠連、馬連などの購入方法で比較分析をしています。
計算方法
当選確率は次のように計算できます。
当選確率 = 当選数 ÷ 購入パターン数
単勝
16頭の中から1着の1頭を選ぶことになりますので、購入パターン数=16、当選数=1となり当選確率は1/16となります。
複勝
複勝は16頭の中から3着までの1頭を選ぶことになりますので、購入パターン数=16、当選数=3となり当選確率は3/16となります。
枠連
枠連は8枠の中から1着と2着になる組み合わせを選びます。組み合わせであり1着と2着の順番を考慮しなくてよいです。つまり、1着1枠-2着2枠と、1着2枠-2着1枠は同じ組合せとして認められますので、1着1枠-2着2枠のパターンをカウントすれば1着2枠-2着1枠はカウントしなくてよいということです。
購入パターン数 =1枠と組み合わせる1~8枠の8パターン +2枠と組み合わせる2~8枠の7パターン +3枠と組み合わせる3~8枠の6パターン +・・・ +8枠と組み合わせる8枠の1パターン =8+7+6+5+4+3+2+1 =36
となるので、
当選確率=当選数1÷購入パターン数36=1/36
となります。
馬連
馬連は16頭の中から1着と2着になる組合を選びます。
組合せという点では枠連と考え方は同じですが、枠は1つの番号に2頭いるため1着2枠-2着2枠という場合もありますが、馬連は1着2着が同じ番号になることがないのが、異なる点です。また、1着1番-2着2番と、1着2番-2着1番は同じ組み合わせとして認めれます。よって、
購入パターン =1番と2~16番の15パターン +2番と3~16番の14パターン +3番と4~16番の13パターン +4番と5~16番の12パターン +・・・ +15番と16番の1パターン =15+14+13+12+11+10+9+8+7+6+5+4+3+2+1 =120
となるので、
当選確率=当選数1÷購入パターン120=1/120
となります。
この場合、順列・組合の公式としてコンビネーションでも計算でき
購入パターン数=16C2=(16×15)÷(2×1)=120
でも計算することができます。
馬単
馬単は16頭の中から1着と2着になる順番を選びます。馬連と異なり、1着1番-2着2番と、1着2番-2着は別のパターンとしてカウントする点に注意しましょう。
購入パターン =1番と2~16番の15パターン +2番と2番を除く1~16番の15パターン +3番と3番を除く1~16番の15パターン +4番と4番を除く1~16番の15パターン +・・・ +15番と15番を除く1~16番の15パターン +16番と1~15番の15パターン =15×16 =240
となるので、
当選確率=当選数1÷購入パターン240=1/240
となります。
この場合、順列・組合の公式パーミュテーションでも計算でき
購入パターン数=16P2=16×15=240
と計算することができます。
3連複
あともう一息です(汗)。3連複は16頭の中から1着~3着になる3頭の組合を選びます。
3頭のうち1番を固定した場合、残りの2頭の組み合わせ、つまりは15頭の馬連=105パターン。続いて3頭のうち2番固定した場合は、3~16番の14頭での馬連=91パターンとなります。これを繰り返していくと
購入パターン数 =1番固定で残り2頭は15頭馬連105パターン +2番固定で残2頭は14頭馬連91パターン +3番固定で残2頭は13頭馬連78パターン +・・・ +13番固定で残2頭は3頭馬連3パターン +14番固定で残2頭は2頭馬連1パターン =105+91+78+66+55+45+36+28+21+15+10+6+3+1 =560
となるので
当選確率=当選数1÷購入パターン560=1/560
となります。
順列・組合の公式を使うと購入パターン数は、16頭から3頭選ぶ=16C3=(16×15×14)÷(3×2×1)=560でも計算できます。
3連単
3連複は16頭の中から1着~3着になる3頭の順番を選びます。
3頭のうち1着が1番とした場合、残りの2頭の順番、つまり15頭の馬単=15×14=210パターン。同様に1着が2番とした場合も210パターン。これを16頭全部に考えるので、購入パターン数は16×15×14=3,360となり、当選確率は1/3,360となります。
順列・組合の公式を使う場合は、16頭から3頭並べる(順序)=16P3=16×15×14=3,360でも計算できます。
ワイド
ワイドは16頭の中から3着までに入る2頭の組合を選びます。ワイドは馬連の考え方の応用で計算することができます。
馬連は、16頭の中から2着までに入る2頭の組合を選ぶものでした。ワイドは、馬連のように選んだ2頭が、3着までに入ればいいのです。さらに詳しくいうと、選んだ2頭が、馬連は1着-2着の1パターンだけで認められるものでしたが、ワイドは1着-2着、1着-3着、2着-3着の3パターンでもよいことになります。
つまり
ワイドの当選確率=(当選数3)÷(馬連の購入パターン120)=3/120=1/40
になります。
2.計算結果まとめ
2016年の有馬記念を例に購入方法別の当選確率は、次の通り。
当選確率の高い順に並べると
高 >複勝>単勝>枠連>ワイド>馬連>馬単>3連複>3連単 > 低
となります。
年末ジャンボの例で計算した、宝くじを1枚購入して1円以上(最低当選額300円以上)が当選する確率は年末ジャンボミニが11.1%でしたが、競馬の場合は複勝で18.7%と払い戻しの確率だけで比較すれば、競馬の方が1.6倍ほど高いという結果になりました。
◇宝くじの「当選確率」と「期待値」を計算してみた
(競馬の場合、出走頭数が最も多いのは18頭ですが、最多出走頭数でも3/18=16.6%と馬券の方が確率は高いです。)
3.まとめ
確率の計算は、得意な場合は公式を使って簡単に計算してもよいです。得意でない場合でも、今回紹介したようにMECE(ヌケ・モレ・カブリ)なくパターンを考えることで、簡単な計算で求めることができます。
また、馬連の計算に枠連を応用したり、ワイドの計算に馬連を応用するなど、一度使った考え方を応用することでゼロから考えるよりも簡単に答えを導くことができます。
これはビジネスシーンでも同じです。MECEに考えるということは、思考のムダを減らします。今回の例のように、たくさんのパターンがありそうだなというときは、1番を固定して残りを考える→2番を固定して残りを考えるというように、考える範囲を少しずつ減らしていくことで効率的にMECEに考えることができます。
考え方を応用するということも思考のムダを減らします。何か考える場合に0→10を考えるのではなく、0→3までを一度使った考え方で稼いでおけば、4→10までを考えればよいことになります。今回の例では、ワイドの計算は馬連の思考に"当選数3"になることを付け加えただけで答えを出せました。