今回紹介するビジネス技は、アイディア創出のビジネスフレームワークの一つ「SCAMPER(スキャンパー)」です。アイディア発想のフレームワークって世の中にたくさんありますが、とっかかりやすく、練習が特にいらずに、一人でも確実に効果を感じられるすぐれものです。一人でなくても複数人でもブレスト形式でも使えるフレームワークを紹介します。
目次
1.SCAMPER活用タイミング
アイディア創出は、発散フェーズと収束フェーズがありますが、SCAMPERは最初のフェーズ「発散」で使用するフレームワークです。アイディア創出のこの2つのフェースについては、また別の機会に紹介したいと思います。
ちなみに、この発散と収束のイメージ図はPowerPointで作成しています。背景に色がある場合の文字装飾は、[文字の効果]-[光彩]を使用すると文字が見やすくなります。この装飾方法を紹介している記事はこちら。(「2-8.重なる文字の光彩処理」参照)
◇Excel円グラフのキレイで効果的な作り方
2.SCAMPERとは
Substitute(代替する)・Combine(結合する)・Adapt(適合する)・Modify(修正する)・Put to other uses(他で使う)・Eliminate(除去する)・Reverse(逆)の7つの視点のそれぞれ頭文字をとって並べたものです。Pに関してはもはや単語ではないので「あり!?」という突っ込みもありますが・・・
また、一説にはSCAMPER=「逸走する」とか「跳ねまわる」などの意味があるようです。「逸走」というのはコースを大きく外れて走るという意味、つまりは発散してくことを意味しているそうです(サムネイルのイメージがまさにSCAMPER)。
それでは6つの視点と、視点のそれぞれの詳細について紹介していきましょう。
2-1.パターンはひとつではない!?
いくつかの参考文献を調べてみると7つの視点は他にもありました。
MにおいてはModify(修正する)に加えてMagnify(拡大する)もあれば、さらにはMinify(縮小する)とまった逆の視点もあります。Midify(修正)を、サイズを修正=拡大・縮小と理解すればよいでしょう。
RにおいてはReverse(逆)に加えてRearrange(再調整する)という視点もあります。Revese(逆)が主流ではありますが、Rearrange(再調整)をベースとして、順番を再調整する=逆にする、と理解するとよいでしょう。
2-2.7つの視点
7つの視点それぞれの考え方を列挙しておきます。
Substitute
(代替・代用)
- 他の何かで代用
- 他の物質で代用
- 他の手段で代用
- 他の動力で代用
- 他の組織で代用
- 他の制度で代用
Combine
(結合・統合・合体)
- 何かと結合
- 何かを混ぜる・混合・混在
- 部分を結合・混合・混在
- 目的を結合
- 機能を結合
Adapt
(適合・応用・順応・受入)
- 他の課題解決へ応用
- 他の環境に(混在させて)順応
- 制約を受け入れる
- 競合を受け入れる
Modify
(修正・変更・緩和・変形・拡大縮小)
- 物理的に修正、変更、変形(色、形、重量、体積)
- 機能的に修正、変更、変形
- 目的を修正、変更
- 広げてみる(機能・形状・目的・対象)
- 重くしてみる(材質、目的、価値)
- 頻度を増やす
- 種類を増やす
- 小さくしてみる(機能・形状・目的・対象)
- 軽くしてみる(材質、目的、価値)
- 頻度を減らす
- 種類を減らす
Put to other users
(他の使用者・使用方法)
- (同業で)そのままで他の使い道はないか
- (他業で)そのままで他の使い道はないか
Eliminate
(除去・省略・脱落)
- 機能を削除・省略して改良
- 極限まで削除・省略
- 不要なものを見つける
- 早(速)くする(時間を除去)
- 利用者を限定(対象・マーケットを除去)
Rearrenge
(再調整・再編成・逆)
- 他のパターンにできないか
- 他のレイアウトにできないか
- 何か交換できないか
- 他の並び方はできない
- 他の組み合わせはできないか
- 上下入れ替えてみる
- 左右入れ替えてみる
- 表裏入れ替えてみる
- 両面にする
- 役割を逆転させる
- パーツの取り付けを逆にする
- 裏から見る、横から見る
3.留意点
3-1.覚えなくてもいい
ここで説明する留意点は、私だけかもしれませんw。それはSCAMPERの中身を覚えられないってこと。でも、覚える必要はありません。
私、とんでもなく英語がダメで。TOEICにおいては、考えずに全部同じAと回答した方がよいのではないかというくらい、確率論を逸脱するの点数。そんな私は、スキャンパーってアルファベットを正確に思い出せない・書けない。また、SCAMPERと書けたとしても中身の単語が思い出せない。
それを解消するのはテンプレート(雛形)です。前述のSCAMPERのそれぞれの意味と視点をまとめたチェックリストが手元にあれば、何かアイディア発想をしたいと思った時にすぐに使えます。手帳にはさむもよし、雛形のファイルをまとめてデータ保存しておくもよし。そのテンプレート(雛形)をExcelで用意していますので、ボタンをクリックしてダウンロードしてください。(私は手帳にはさんでいます。)
3-2.全部埋めなくてもいい
全部埋める必要はありません。7つの視点で考えると、悩むことなく、考えて前に進みやすくなるためのフレームワークです。その視点のアイディアが出ない(うーむ・・・)となってしまうと、本末転倒。上からでなくても、思いつきやすいところからでもテンポよく考えるのがコツ。すすめていくうちにアイディアが出てくると、はじめは発想が出てこなかった視点でも、後になって思いつくようになる場合も多くあります。
また、全体をざっとすすめた後で、偏りがないか見渡してみて、アイディアが少ないところ=改善余地がありそうなところにや、アイディアが多いところ=そのものの長所を伸ばす、などその時の戦略に応じて考える時間のかけかたを調整してみるとよいです。
4.活用シーン
4-1.個人で
個人で十分につかえるフレームワークです。冒頭にも紹介しましたが、練習や訓練をしていなくても、すぐに効果が出るものです。が1つだけポイントがあります。それは、実際に書き出すなどアウトプットするということです。雛形にメモ欄を用意してありますので、ここの思いついたものを記載することを強くおすすめします。
書いたり、発言するというアウトプットは、自分の脳に対するインプットにもなります。みなさんこんな例はありませんか?
一人で考え事をしていて、誰かに報告したり相談しようと思って口に出してみた瞬間に、解決策が思いついた!
これは、頭の中だけで考えて思考がすすまなかったところ、報告=アウトプットが、自分へのインプットとなったために思考が進んだのです。一人で考え事をするときも、アウトプットすることを習慣にするとよいでしょう。
4-2.チームで
ブレスト(ブレインストーミング)形式でのアイディア創出の場面でとても重宝します。運用手順としては、次の通り。
- 参加者の手元には印刷した雛形を配布
- 各自で数分考える
- ホワイトボードに書き出しながらブレスト
ホワイトボードに書き出す場合は、7つの視点をこのように予め書いておくと全体のバランスが見えてよいでしょう。ここでまた1つだけポイントがあります。ブレストで7つの視点以外にも発想が沸いてくることもあるので「その他」のカテゴリも作っておくことです。
ホワイトボードのエリアは8分割になりますので、右下の1エリアが余ります。この箇所に「その他」カテゴリーを用意しておきます。ブレインストーミングで闊達な発言がすすむと、7つの視点に分類できずに困る場合があります。その時にどこに記載するか迷う(考える)時間はムダです。板書することは手段でしかありませんので、そこで機会ロスを生まないようにすることを意識しておきましょう。
ブレーンストーミングについての実用ポイントについてはこちら。
◇【アイディア発散】ブレインストーミングの4原則+2コツ+2秘技