夢を買える宝くじ。実際の宝くじを使って「確率」と「期待値」を理解してみたいと思います。「年末ジャンボ」、「年末ジャンボミニ」、「年末ジャンボプチ」の当選金額別「確率」や「期待値」の比較分析をすることでそれぞれの統計データの意味をさらに深く理解してみましょう。結果だけを紹介しているサイトは他にたくさんありますので、結果だけを知りたい場合は他のサイトをみていただくか、「1-7.当選金額別当選確率まとめ」、「2-3.期待値まとめ」まで読み飛ばしてください。
目次
1.当選金額ごとの当選確率を比較分析してみる
分析セオリーの一つとして"比較する"というものがあります。一つのデータだけでは、それが良いのか悪いのか、高いのか低いのかがわかりません。同類の複数のデータを並べることで、相対的に比較分析することができます。今回のケースでは、「年末ジャンボ」、「年末ジャンボミニ」、「年末ジャンボプチ」の3つを例に比較分析してみたいと思います。
1-1.当選確率の計算方法は?
当選確率は次の方法で計算できます。
当選確率=当選枚数÷1ユニット枚数
さらに1,000万以上など当選金額ごとの当選確率は、次の方法で計算できます。
1,000万以上当選確率=1,000万以上当選枚数÷1ユニット枚数
当選確率を計算するためには、当選枚数と1ユニット枚数が必要であることがわかります。まずはユニットという考え方について理解しておきましょう。
1-2.ユニットって何?
「年末ジャンボ」系の販売枚数を理解するためには、"ユニット"という単位を理解する必要があります。このセクションでは、"ユニット"の説明と、宝くじごとの1ユニットあたりの枚数を確認していきます。(宝くじ公式サイトでも確認できます。)
「年末ジャンボ」宝くじを例に説明していきましょう。「年末ジャンボ」の1枚は、3桁の"組"と6桁の"番号"で構成されています。
"組"は001~200の範囲で、"番号"は100000~199999の範囲で振られます。言い方を変えると、1つの"組"は10万枚で構成されており100000~199999の"番号"が振られ、その10万枚で1組のものが200組になった全2,000万枚が1ユニットという単位で管理されています。
1-3.宝くじごとのユニット枚数
1ユニットの構成は宝くじによってそれぞれ決められています。今回比較分析する「年末ジャンボ」、「年末ジャンボミニ」、「年末ジャンボプチ」の3つも全て同じというものではなく異なる部分があります。宝くじごとの1ユニットごとの構成は次のようになっています。
1-4.当選枚数は?
続いて当選枚数を確認していきましょう。当選枚数は宝くじごとに異なります。「年末ジャンボ」宝くじの当選金額ごとの枚数は宝くじ公式サイトで次のように掲載されています。
「年末ジャンボ」当選枚数 <25ユニットの場合>
ここで注意したいのは発表されている当選本数は25ユニットあたりという点です。そこで1ユニットあたりに換算してみます。1ユニットあたりの当選数の単純にそれぞれ1/25となります。
(25ユニットあたりの当選数と販売数で計算しても結果は同じですが、桁が大きくなるので1ユニットあたりで計算します。また、厳密には25ユニットというのは販売予定数なので、25ユニットが売り切れとならなかった場合は25ユニットあたりの当選数にならない場合もあります。)
「年末ジャンボ」の1ユニットあたりの当選枚数は次の通り。
同様に「年末ジャンボミニ」の1ユニットあたりの当選枚数は
「年末ジャンボプチ」の1ユニットあたりの当選枚数は
となります。1ユニットあたりの枚数と、それぞれの当選枚数がわかったので当選確率を計算してみましょう。
1-6.当選確率は?
「年末ジャンボ」を例に計算してみます。1枚購入して1円以上(実際は最低当選額300円以上)が当選する確率は、
1円以上(300円以上)の当選枚数÷販売枚数
=2,221,822枚÷20,000,000枚=11.109%
となります。
続いて当選金額別の当選確率を計算してみましょう。10万円以上が当選する確率は、
10万円以上の当選枚数÷販売枚数
=1,822枚÷20,000,000枚=0.009110%
同様に100万円以上が当選する確率は、
100万円以上の当選枚数÷販売枚数
=223枚÷20,000,000枚=0.001115%
1,000万円以上が当選する確率は、
1,000万円以上の当選枚数÷販売枚数
=23枚÷20,000,000枚=0.000115%
となります。
これをまとめると「年末ジャンボ」の当選金額別の当選確率はつぎの通り。
同様に「年末ジャンボミニ」、「年末ジャンボプチ」においても計算し、まとめてみると
この並びではわかりづらいので、当選金額ごとに並び替えてみましょう。
1-7.当選金額別当選確率まとめ
当選金額別に当選確率を比較分析できるようにまとめてみたのがこちら。
何かしら(1円以上が)当選する確率は、若干ですが宝くじによって多少異なっているのがわかります。10枚セットで購入すれば300円1枚が当選する仕組みはいずれも同じなのでなかなか意識されないと思いますが、1枚単位で考えると当選確率は違っています。私も今回計算し比較してみて発見することができました。このように比較することで他との違いからその特徴を知ることができます。
ちなみに、競馬の場合は確率が最も高いのは複勝という購入方法で、16頭立ての場合の確率は18%程度あります。宝くじと比較すると、やや競馬の方が高い結果になっています。
◇有馬記念を例に競馬の確率を計算してみた
さらに当選金額別に見てみると、10万円以上の当選確率は「年末ジャンボプチ」が最も高く、他の3倍程度の有意差があります。また、100万円以上、1,000万円以上の当選確率はいずれも「年末ジャンボミニ」が最も高い結果となっていました。10万円以上を狙う場合は「年末ジャンボプチ」、100万以上を狙う場合は「年末ジャンボミニ」といえるでしょうか。
「年末ジャンボ」がどの当選金額の当選確率においても優位性がないことがわかりますが、ここで生じる疑問が「年末ジャンボ」は他に比べて損なのか?という点です。それを解明するポイントとして次に紹介する"期待値"という考え方があります。
2.期待値を計算してみる
確率論における"期待値"を計算してみることで「年末ジャンボ」の購入価値(費用対効果)を比較分析することができます。
2-1.期待値とは?
確率論における"期待値"というのは"確率変数の実現値を確率の重みで平均した値"となります(詳しくはウィキペディア参照)。言い方を変えると"試行"に対して"結果"の見込み度を表したもので、宝くじの場合は"購入金額"に対しする"払出額"が期待値となります。
2-2.宝くじにおける期待値を計算してみる
「年末ジャンボ」の"購入金額"は60億円(=1ユニット2,000万枚×300円/枚)となります。
また、1ユニットあたりの"払出額”は29億9,970万円(=7億円×1本+1.5億円×2本+30万円×199本+1百万円×200本+10万円×1,400本+1万円×20,000本+3,000円×200,000本+300円×2,000,000本)となります。
期待値=払出額÷購入金額であることから、「年末ジャンボ」期待値=29億9,970万円÷60億円=0.49995となります。期待値が0.49995というのは、60億円で購入して30億円弱の戻りということからもイメージできるように、投資に対してリターンが約半分になるという意味になります。別の言い方をすると、300円で購入した宝くじ1枚は、購入直後には約150円の価値になるということです。
同様にして期待値を計算してみると、、、
「年末ジャンボミニ」の"購入額"は30億円(=1ユニット1,000万枚×300円/枚)、"払出額"は14億9,000万円(=5千万円×7本+1千万円×14本+1千万円×10本+円100万×100本+10万円×1,000本+1万円×10,000本+3千円×100,000本+300円×1,000,000本)で、期待値は0.49666となります。
さらに「年末ジャンボプチ」の"購入額"は30億円(=1ユニット1,000万枚×300円/枚)、"払出額"は15億円(=7百万円×100本+10万円×3,000円+1万円×2,000本+300円×1,000,000本)で、期待値は0.50000となります。
並べてみると期待値はそれぞれ次のようになります。
2-3.期待値まとめ
3つのジャンボ宝くじの期待値はほぼ同じということがわかりました。統計上の有意差はありませんが、強いて言うならば「年末ジャンボプチ」の期待値が最も高いということでしょうか。
期待値の概念を前提に考えると、どの宝くじに投資しても期待されるリターンも同じです。一方で当選金額ごとの当選確率が異なるので、どの宝くじを選定するかは狙う当選金額のレンジによって判断すればよいということになります。
ちなみに、1枚で1億円以上の当選が可能なのは「年末ジャンボ」のみですので、1億円以上の高額当選を狙う場合は「年末ジャンボ」を選択、ということになります。
3.まとめ
年末ジャンボ宝くじの他に、年末の恒例行事としては有馬記念なんかもありますね。有馬記念の当選確率も計算してみました。
◇有馬記念を例に競馬の「当選確率」を計算してみる
身近な宝くじを用いて"確率"と"期待値"を計算したのは、実は"確率"や"期待値"の計算は経営マネジメントでも使われる統計値だからです。経営マネジメントの視点の一つを、身近に感じてもらえるように紹介してみました。経営マネジメントでは戦略の費用対効果の期待値を計算し、戦略選択の指標にすることがあります。次は、経営マネジメントとしての"期待値"の事例について紹介したいと思います。